資源輸出国・日本。食料や資材、エネルギーまで、その大部分を輸入に頼っている日本において「資源輸出国」になることなど、夢のまた夢と思われるかも知れない。しかし、現実的には、その可能性はゼロではない。キーワードは、宇宙・レーザー・太陽だ。
CO2の排出量の少ない太陽光エネルギーの利用は、地球温暖化対策事業として大きな期待を寄せられている。現在その技術は急速に発展し続けており、2020年までには、年率30%増という予測まであるほどだ。ただ、太陽光エネルギー利用にも問題点はある。ひとつはコストの問題。もうひとつは“お天道様次第”と言われるエネルギー供給の安定性だ。この2つをクリアにするために期待されているのが、宇宙エネルギー利用システム(SSPS)と呼ばれる、宇宙太陽発電。
レーザーの可能性を太陽光発電と結びつけ、宇宙での発電システムというダイナミックなビジョンを掲げる藤田和久氏に話を聞いた。
2007年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書(AR4)では、世界平均気温の上昇の原因として温室効果ガス増加の可能性が極めて高いと報告されています。つまり、地球温暖化の原因は、人為的に排出されるガスによって引き起こされるというのが明確になってきたのです。こういった状況の中で、太陽光発電や太陽熱利用、風力発電など、自然エネルギーを有効活用すると
いうのは、これからの地球を考えていく上で当然のことと言えます。特に太陽光エネルギーの利点である「どこでもできて、尽きることのない」というのは魅力的ですね。
ドイツは2100年までに使用エネルギーの5〜7割を太陽光エネルギーでまかなうという目標をたてていますし、スペインなど日照比率が高い国では太陽光パネルを使った発電ではなく、太陽熱を利用した発電が始まっています。
日本でも太陽光パネルの性能など技術力の面で意識の高さがうかがえますし、家庭用太陽光発電の買い取り義務化といった制度を作るなど、比較的先進的に太陽光エネルギーに参入できていると思いま
す。今後浸透していくかどうかの問題はやはりコスト面ですね。現在、1kWh の電気を作る対価は、例えば風力発電では約14円なのに対し、太陽光発電は約40円もかかっています。コスト削減技術が進ん
でいけば、さらに一般的な普及が目指せるはずです。
もともと私は、大阪大学の研究センターでレーザー核融合の研究に取り組んでいました。その時にレーザーの持つさらなる可能性を感じ、「この出力レーザーがあれば、もっといろいろなことができるのではないか」という考えを抱くようになりました。そんな折、宇宙航空研究開発機構(JAXA)でレーザーを使った宇宙事業を行っているというのを知り、研究の場をJAXAへ移動。そこから始まったのが、レーザーによる宇宙太陽発電です。
簡単に言うと、専用の衛星を宇宙に飛ばし、宇宙空間で太陽光エネルギーを吸収、それをレーザーを使って地上へ伝送するというシステムです。地上で吸収できる太陽光エネルギーというのは、天候や昼夜の問題、そして大気による減衰のため、安定して得られるものではありません。そこで「宇宙で太陽発電をすれば、太陽光を遮るものは何もなく、つねにエネルギーを吸収することができる」と考えたわけです。実際に宇宙空間での太陽光エネルギーは、地上に比べて約10倍得られることがわかっています。
実はこの宇宙太陽発電の考え方は、1960年代にNASAですでに発表されたものなんです。しかし、莫大なコストがかかるのと、当時はレーザービームではなくマイクロ波のビームで地上に伝送するというものだったため、研究は進みませんでした。レーザーにもマイクロ波にも電磁波の波長がそれぞれ決まっていて、その波長が短ければ短いほど、地上に送る時のサイトが小さくて済みます。マイクロ波の波
長は10mほど、レーザーの波長は数ミクロンです。それぞれの波長を地上に伝送するとなると、マイクロ波の場合は地上に数???のサイトが必要になります。しかし、レーザーを使用すれば、サイトは100mもあれば十分です。つまり、レーザーを使うことによって、地上の必要な箇所にピンポイントでエネルギーを伝送することができるのです。
律が国会で成立し、そこに明記された宇宙事業の柱のなかに、われわれが研究しているレーザーによる宇宙太陽発電も含まれています。まずは、今後約10年間を費やして、宇宙基本法に沿った研究を重ねていき、宇宙太陽発電が使い物になるのかどうかを検証していきます。その上で、2030年代を目標に実用化ができればと考えているところです。

【経歴】大阪大学大学院工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)/1992-2000年 大阪大学レーザー核融合研究センター「X線分光画像計測を用いたレーザー核融合炉心プラズマの診断研究」/2001年 航空宇宙技術研究所(NAL)・宇宙航空研究開発機構(JAXA)角田センターにてレーザーによる宇宙太陽エネルギー利用研究/2005年 光産業創成大学院大学・准教授
http://www.gpi.ac.jp/bunya/energy/























