遠州の海がなくなる
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海岸侵食により砂浜が削りとられ、中田島砂丘では砂の丘がなくなり、冬に西風で美しい風紋を描く砂浜には、砂利がごろごろとしています。かつての遠州の美しい海はもうなくなってきているのです。子供の頃、当然のようにあった景色や自然がなくなる。身近な場所での環境の変化。それを見たとき、知ったときあなたはどう感じますか?いま世界では、環境変化による様々な問題が叫ばれています。テレビや新聞によると「南太平洋のツバルでは、海面上昇により国が沈もうとしている」「北極では氷が溶け始め、シロクマの生活圏を脅かしている」といいます。でも、どこか絵空事。テレビのスイッチを切れば、新聞を閉じれば、そのニュースはもう終わり・・・。
しかし、環境問題は待ったなし。私たちが「便利」という言葉のもと、無造作に使ってきた地球資源。この生活を続けるなら、明らかに自然は、地球は、破滅に向かうでしょう。この美しい地球を次世代に繋げることができません。
身近な景色や自然がなくなった時の気持ちを持って考え、行動すること。。それは、世界、地球規模で環境問題を考えることと何ら変わらないことだと思います。そしてその現実を目の当たりにすることで、テレビの中のニュースや新聞の紙面で描かれることもただの絵空事ではなくなることでしょう。
海岸の侵食がもたらすもの

中田島の砂の丘はその数が減り、今では海岸線までひとつしかなくなってしまいました。その海岸線は、ここ40年で200メートルほど減退したといわれています。竜洋や五島(天竜川河口の西側)では、砂浜が大きくえぐられ、堤防のコンクリート部分にも影響が出ました。福田漁港や浜名湖今切口では、砂が堆積し船の航行に支障をきたす様になってきています。しかしその脇の浅羽や新居の海岸では砂浜が減少するなど、海岸侵食にまつわる様々な現象が見られます。
それによってここ遠州の海では様々な環境の変化が起きているのです。
アカウミガメのやってくる砂浜
遠州の砂浜には、5月から8月にかけてアカウミガメが産卵のためにやってきます。その数は遠州灘の海岸で約700回※を超えると言われています。ここは日本でも有数の産卵地なのです。そして、ここで生まれたアカウミガメは、アメリカ西海岸やメキシコ付近を回って約20年後、日本近海に戻ってきて産卵します。もしかしたら、今年やってきたアカウミガメは20年前にこの地で生まれたカメかもしれません。
産卵場所は、満潮の時にも卵が水に濡れない高さのところ、そして、当然砂の浜でなければ上陸できません。その砂浜がなくなると言うことは、彼女たちが卵を産む場所がなくなると言うことです。そのとき、彼女たちはどこで産卵するのか?そして、子供が生まれないということは、その種の絶滅を意味するのではないでしょうか?
中田島砂丘では、ここ2年で砂浜を守るという大儀のために、人工物(離岸堤)を2カ所も設置。同時に行っている養浜の影響で砂浜に砂利が増えてきました。もし、そのカメがここで生まれたカメだとしたら…。20年ぶりの故郷の姿は、彼女たちの目にどう映るのでしょう。
※1頭のカメが数回、産卵しにやってくるため、頭数の把握ではなく、産卵回数の把握になっています。
砂浜を彩る植物たち
砂浜は、勿論砂だけで構成されているのではなく、様々な植物が植生しています。ここ遠州の海で代表的なモノは、「ハマヒルガオ」「コウボウムギ」といったところでしょうか。
「ハマヒルガオ」はその名の通り、アサガオを二回りほど小さくした可憐な花です。そのほとんどが群生しており、5月から8月にかけてうすピンクの絨毯を敷いているかのようです。
「コウボウムギ」は実際、筆にも使われたことがあるといわれ、麦の穂にも似ていることから弘法大師と麦を合わせて「コウボウムギ」という名になったそうです。夏、砂浜に行ったとき、素足で踏んでチクッとした体験をした人もいることでしょう。
この植物たちは砂浜を彩るだけでなく、砂浜に根を張り巡らせ、風によって砂が飛んでいく(飛砂)を防いでくれています。これらは、豊かな砂浜で海岸線より15mぐらいから植生しています。砂浜の減少は、彼らの植生域を脅かすことになり、いずれその姿を見ることが出来なくなるかもしれません。
遠州で生まれ巣立つコアジサシ
「コアジサシ」は国の絶滅希少種にも指定されている鳥です。遠州の海では、初夏の海にダイビングして魚を捕る姿が見られます。そんな「コアジサシ」のコロニー(営巣地)がここの砂浜にもあります。
5月頃から約4千羽がオーストラリアやアフリカからやってきて、砂浜の植生地帯に卵を産み、雛を育て、8月頃にはまた海を渡って帰って行きます。
彼らの住処を脅かすのは、砂浜、植生の減少ばかりでなく、最近ではカラスもその卵や雛を狙っています。コアジサシたちは、為す術もなく攻撃されてしまいます。カラスの増加は、海岸近辺の生態系の変化によることが大きいのでしょう。ここ数年は、防砂林に住みつくカラスも多く、夕方には、まるでヒッチコックの映画を思わせる様に、群れをなして飛来するのが見られます。

















